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2016年11月30日水曜日

【そうだったのか!TPP-Q24】私たちの雇用は大丈夫?

Q24.私たちの雇用は大丈夫?

A24.労働条件や雇用にとって有害としか言えません


 労働については、第19章「労働」が設けられました。政府は、この章が「労働条件悪化の歯止めになる」と説明していますが、それは期待できません。TPPは貿易障壁をなくし、自由化・規制緩和を推進するため、働く人の労働条件や権利は後退します。労働の章も、グローバル企業がますます国境を超えて自由に展開することを保障する内容になっています。


 第19章「労働」には、ILO(国際労働機関)の98年新宣言が引用されていますが、「結社の自由」、「強制労働禁止」、「差別待遇の禁止」、「児童労働の禁止」という最低限守るべき国際労働基準の基本が、ILO条約よりも弱くなる可能性があります。例えば強制労働については、「強制労働に関与した産品を輸入しないよう奨励する」としかありません。しかも日本は、「強制労働の廃止」、「差別待遇の禁止」に関するILO条約2つ(105号、111号)を批准していません。

 また日本では、TPPの先取りともいえるような派遣法の改正、解雇規制の緩和、残業代の撤廃、外国人労働者・研修生の受け入れの規制緩和など労働法制の改悪が進んでいることにも警戒が必要です。


 TPPによって確実に利益が増えるのは、ごく一部の自動車、IT家電、インフラ系企業と商社であり、地域経済は「原則無関税化」によって長期にわたり打撃を受けます。TPPというグローバル経済の原理は、日本から海外への投資を増やします。壊されるのは農業だけではありません。原料を生産して運び、加工し、販売するという国内、地域のサプライチェーンが壊されれば、地域経済全般に影響が及び、失業者が増えることになります。TPPは日本の雇用にとって有害だという声を上げねばなりません(布施恵輔)

Attention! 第19章 労働
●第19.6条 (中略)各締約国は、(中略)自国が適当と認める自発的活動を通じ、全部または一部が強制労働(児童の強制労働を含む)によって生産された物品を他の輸入源から輸入しないよう奨励する。

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2016年11月29日火曜日

【そうだったのか!TPP-Q23】環境に関する政策に 影響はありますか?

Q23.環境に関する政策に 影響はありますか?

A23.大企業や投資家の利益が優先されます


 貿易や投資の自由化を前提とするTPPでは、環境保護や気候変動対策などの国際的な課題よりも、大企業や投資家の利益が優先されています。そのため、TPPでは環境保護はあくまで「努力目標」であり、何の義務づけもありません。第20章「環境」には具体的な罰則や企業への責任追及を求める規定がほとんどないのです。

 こうしたことを受け、アメリカやオーストラリアのNGOは、環境に悪影響が出るとの批判を強めています。具体的には、①少なくとも7つの国際環境条約について実効性ある規定を設けるべきであるにもかかわらず、触れているのはワシントン条約に関してのみ。②違法に伐採された木材、違法に捕獲された野生生物等の貿易を禁じていない。③IUU漁業(違法、無報告、無規制)への取り組みが十分ではない。④フカヒレの貿易と商業捕鯨を禁じていない。⑤「気候変動」という文言すらなく、低炭素型経済への移行は自主的な手段を促すにとどまっている、などです。

 また、ISDS条項も環境にとって大きな脅威です。すでに多くの自由貿易協定で起きているISDS提訴では、天然ガスや石油企業など、環境破壊に関わる企業が莫大な損害賠償を求めているケースが数多くあります。

 ISDSは企業や投資家に有利に働くことが多く、提訴される国は途上国だけでなく、アメリカやカナダなどの先進国も含まれており、日本も他人事ではありません。脱原発や低炭素型社会への移行など、私たちにとって望ましい政策への変更も、「企業の利潤追求の障害だ」とされて訴えられる危険は十分にあり、そうした政策や規制を進めることを委縮させる懸念もあります。(内田聖子)

Attention! 第20章 環境
●第20.17条2項 各締約国は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(編集部注:ワシントン条約)に基づく義務を履行するための法令その他の措置を採用し、維持し、及び実施する。

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2016年11月23日水曜日

【そうだったのか!TPP-Q22】公共サービスにも影響はありますか?

Q22.公共サービスにも影響はありますか?

A22.暮らしや地域の社会インフラの存続が危うくなります


 国民生活や地域社会に広く関わる分野に、TPPで初めて独立した章として設けられた第17章「国有企業」があります。ベトナムなど国営企業の多い国が一番影響を受けますが、私たちの暮らしにも無縁ではありません。

 国有企業とは、政府が出資して公的なサ-ビスを提供する企業のことです。金融、郵便、病院、鉄道、空港、政府機能・政策を担う公有企業など、国民生活に関わるものが多くありますが、対象企業はTPPの発効後6か月は公表されません。どんな影響があるのか、国会で審議することもできません。

 TPPには、国有企業は一般の企業と同じ土俵で競争をしなければならないという考え方が貫かれています。問題は「非商業的援助」、つまり必要とされる財政支援の禁止です。鉄道や病院、郵便など、地域に欠かせない事業体には、公的支援を受けているものがあるため心配されます。

 政府は「営利目的でない独立行政法人は対象とならず、公共的な事業に影響はない」と言っています。しかし、病院も含め、一般企業と変わらないしくみで事業を行い、必要な利益を確保している例は多くあります。政府の説明を鵜呑みにできるのか、大いに疑問です。

 政府は「国内の事業は対象にならない」とも説明していますが、協定文では「貿易または投資に影響を及ぼすもの」とされており、「影響があるもの」については対象になりえます。また、鉄道、金融などは海外展開が活発化しているので、規制の対象になるはずです。この章の対象外でも、投資・金融など他の章の規制からは逃れられません。そして、他の参加国が多くの国有企業を例外にしているのに、日本だけはゼロなのも問題です。(近藤康男)

Attention! 第17章 国有企業
●第17.1条 定義:主に商業活動に携わる政府支配の企業 商業活動:営利を指向し、数量・価格を決定出来る企業活動
●第17.2条1項 この章の規定は、参加国同士の貿易・投資に影響を及ぼすものに適用
●第17.6条1項 国有企業に対して商業ベースによらない支援をして、他のTPP参加国の利益に悪影響を及ぼしてはならない。

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2016年11月17日木曜日

【そうだったのか!TPP-Q21】公共事業や地域経済はどうなりますか?

Q21.公共事業や地域経済はどうなりますか?

A21.地域外、特に外資系企業に仕事を奪われる恐れがあります


 公共事業については、第15章「政府調達」が関係してきます。「政府調達」では、国や政府機関、地方政府などが物品やサービスを調達したり、建設工事を行ったりする際のルールを定めており、TPPは国内企業と同じ条件を外国企業に与えなければなりません。

 一つ目の問題点は「使用言語」です。TPPは英語を使うことを奨励していますが、これは事実上、英語の強制を意味しています。入札の際の書類の英語化が進むなど、相当のインパクトを生むでしょう。

 二つ目は、調達の「公正性の確保」です。これは「談合の排除」を意味します。日本は談合社会ですので、著しい影響が出てくるはずです。

 三つ目は、中央政府、地方政府、政府団体のほとんどすべての分野について、日本は最大級の市場開放を約束したことです。その結果、世界最大級の建設会社「ベクテル」や、資源開発会社「ハリバートン」などの巨大外国企業が、政府や自治体が行う公共事業などを落札していく可能性が高まります。日本の調達構造が変えられ、海外資本による地方経済への浸食が進めば、地域の建設業者や中小企業の倒産も避けられなくなるでしょう。


 また、日本の地方自治体では、地域経済の振興のために「中小企業振興基本条例」や「公契約条例」を制定し、地元の中小企業への発注を積極的に行うところが増えています。しかし、第9章「投資」では、地元から雇用や物品、サービスの調達を求める「現地調達の要求」を禁止しており、こうした条例ができなくなる恐れがあります。このように、TPPは地域経済の振興策や自治体主導の地域づくりの障害にしかなりえません。(和田聖仁)

Attention! 第15章 政府調達/第9章 投資
●第15.4条1項 各締約国は、(中略)他の締約国の物品及びサービスならびに他の締約国の供給者に対し、即時にかつ無条件で、(中略)不利でない待遇を与える。
●第9.10条1項 いずれの締約国も、(b)(中略)現地調達を達成すること、(c)自国の領域において生産された物品を購入し、利用、若しくは優先し、…(中略)の要求を課してはならず、又は強制してはならず…

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2016年11月14日月曜日

【そうだったのか!TPP-Q20】著作権の分野はメリットもあるんでしょ?

Q20.著作権の分野はメリットもあるんでしょ?

A20.米国流の著作権ビジネス化が進みます


 著作権に関してはアメリカの勝利であり、「知財の米国化」が進むことになるでしょう。アメリカの映画やアニメ、キャラクタービジネス、巨大IT企業などは特許・著作権料で15.6兆円(2013年)もの外貨を稼ぐ輸出産業。TPPでは、当初から著作権保護強化と厳しい罰則規定を求めてきたのです。

 ①著作権保護期間の延長:日本では著作権の保護期間は作者の死後50年ですが、TPPで70年に延長されます。これによって、著作権保護期間が終了した作品を無料で共有したり、再出版して新たな文化価値を生み出す活動(青空文庫など)が大きな制約や打撃を受けます。日本の著作権料の国際収支は年間約8000億円の赤字で、年々拡大しています。保護期間の延長でメリットを得るのはディズニーなどの企業でしかありません。


 ②非親告罪化:日本では著作権侵害は、著作者自身が告訴しなければ国は起訴・処罰ができない「親告罪」です。しかしTPPでは非親告罪化、つまり本人以外の第3者からの通報によって捜査可能となり、パロディや二次創作などの萎縮が懸念されます。日本政府は非親告罪化は「商業的規模の海賊版」「原作の市場での収益性に大きな影響がある場合」に限定するとしていますが、定義は曖昧で警察当局の判断次第です。しかも海賊版の取り締まりは、各国の法律順守や締約国同士の警察の連携によって十分対処できることで、非親告罪化の必要はありません。


 ③法定賠償金制度:日本では著作権が侵害された場合、権利者の実損害のみを賠償金として求めることがほとんどで、金額は少額です。一方、アメリカでは法定賠償金という制度が存在し、実損害の証明がなくても、裁判所が懲罰的な賠償金を決められます(1作品で15万ドルまでの法定賠償金や弁護士費用も別途請求)。これが導入されれば知財訴訟が頻発、賠償金も増加し、結果的にコンテンツビジネスが委縮する危険があります。何よりも、訴訟社会であるアメリカの裁判文化を持ち込むことにほかなりません。(内田聖子)

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2016年11月11日金曜日

【そうだったのか!TPP-Q19】金融って私たちに関係あるの?

Q19.金融って私たちに関係あるの?

A19.金融危機から国民生活を守れなくなります


 TPPの根本にあるのは、金融も国境の壁を取り払い、資金の流れを阻害することなく自由に流動させる新自由主義の思想です。シティバンクやゴールドマンサックスといった、ウォール街のメガ金融グループが主導する国際金融資金の流れを止めることは、さらに困難になるでしょう。

 こうした勢力が日本で狙っているのは、ゆうちょ銀行・かんぽ生命やJA共済などの資金、さらには年金(GPIF)、日銀マネー、企業の内部留保など、日本が戦後70年かけて蓄えてきた富です。2007年の郵政民営化のときの郵便貯金・簡易保険の資金流出と同じで、TPPはそのバージョンアップといえます。これらの資金が国際金融市場に流出すれば、日本社会の貧困化がより一層進むのは必至です。


 アメリカは第11章「金融サービス」をとても重視しています。最大の問題点は、金融危機に陥った際に、国民生活や消費者を守るために各国政府が行う金融安定化政策(マクロプルーデンシャル措置)を、事実上行使できなくなることです。1997年に起きたアジア通貨危機に対してマレーシアが行った「資本取引規制・固定相場制」や、2008年のリーマンショック後にアメリカで成立した「ドッド=フランク法(ウォール街改革・消費者保護法)」など、自国の金融システムを守る規制が、TPPの下では働かなくなるということです。アメリカ国内でも、金融危機が再び引き起こされる危険性が高まるという批判が出ているほどです。

 加えて、第17章「国有企業」の附属書では、日本だけが留保(例外)を出していません。政府は、日本政策金融公庫など国有企業をすべて民営化し、外国資本の傘下にしても構わないと考えているのです。(和田聖仁)

Attention! 第11章 金融サービス
●第11.11条1項 (中略)締約国は、(中略)信用秩序の維持のための措置は、第1文に定める例外が適用されるこの協定の規定に適合しない場合には、当該規定に基づく当該締約国の約束又は義務を回避するための手段として用いてはならない。

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2016年11月9日水曜日

【そうだったのか!TPP-Q18】かんぽ生命や共済はどうなるの?

Q18.かんぽ生命や共済はどうなるの?

A18.民間保険と同じように扱わなければなりません


 第11章「金融サービス」では、金融の定義は「すべての保険、銀行、その他の金融サービス」とされ、「保険」が金融の一つに位置づけられています。「共済」という記述はありませんが、これまでのアメリカや業界団体の主張で「保険」に共済が含まれているのは明らかで、今後、共済に対する意見が寄せられることは十分想定されます。

 アメリカの狙いの一つ目は、日本国内での医療保険市場の拡大です。アメリカはかねてより、かんぽ生命や共済(JA共済、全労済、コープ共済、都道府県民共済など)に対して「民間保険会社より優遇されている」として、金融庁に対し、民間保険会社と同じように共済団体を管理・監督させるよう要求しています。保険会社と同様の基準で運営されれば、利潤第一の経営が求められ、どこの地域でもカバーされるユニバーサル・サービスや、非採算部門などは撤廃されることになり、加入者の立場に立った運営はできなくなるでしょう。

 二つ目の狙いは、共済団体が将来の給付のために積み立てている積立金を金融市場に還流させることです。郵政民営化による「かんぽマネー」が財界や機関投資家、海外投資家の運用財源となったように、共済団体の積立金運用を金融市場に還流させようとしています。

 これまでのところ、TPP協定の中で共済について具体的な取り扱いは示されていませんが、アメリカは1990年代から毎年のようにかんぽ生命や共済に対して規制強化を要求してきており、TPPにおいても「米国側関心事項」として、保険(共済を含む)が位置づけられています。(橋本光陽)

Attention! 第11章 金融サービス
●第11.1条 「金融サービス」とは、(中略)全ての保険及び保険関連のサービス並びに全ての銀行サービスその他の金融サービス(中略)を含み… 
●保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡 2(b) 日本国政府は、日本郵便(株)が、(中略)その販売網を民間の保険サービス提供者の商品の取扱いのために利用可能とすることを妨げない。

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2016年11月7日月曜日

【そうだったのか!TPP-Q17】国民皆保険制度が守られたなら大丈夫では?

Q17.国民皆保険制度が守られたなら大丈夫では?

A17.制度の内側から壊されていくでしょう


 政府は、国民皆保険制度を支えている、薬の価格を決めるプロセスは変更されないと言っています。しかし、制度の枠組み自体は変わらなくても、これまでよりさらに「企業寄り」の運用に変わっていく恐れがあります。

 TPP協定の第26章「透明性及び腐敗行為の防止」の附属書では、各国の薬の価格を決めるプロセスにおいて「透明で公正」な手続きを行うよう求めています。保険収載といって、新しい薬や医療機器を保険に適用する手続きを進める際には、「検討を一定期間に完了すること」や「手続規則、方法、指針を開示すること」を求めたり、製薬会社が不服を申し立てることもできるようになっています。

 日米二国間の交換文書(サイドレター)にも、薬の価格の決め方について、外国の利害関係者が政府の審議会に出席することや、意見書を提出できることが定められています。今後、アメリカの製薬企業が「透明性」を盾に、利害関係者として影響を及ぼすようになり、発言力が今以上に強まっていくでしょう。外国の製薬企業の主張に沿う形で、薬の価格制度が運用されれば、実質的に価格決定プロセスが変わることになります。

 さらに、「関連する将来の保健制度」(日本は国民皆保険制度)について「協議する用意があることを確認」したことも明記されました。いつから何を協議するかは書いていませんが、「協議する」という確約をさせられた形です。このまま外国企業の言いなりとなれば、国民皆保険制度が続いても内側から壊され、空洞化する危険があります。(寺尾正之)

Attention! 第26章 透明性及び腐敗行為の防止
●附属書26-A.第3条 締約国は、自国の保健当局が(中略)新たな医薬品若しくは医療機器を一覧に掲載するため(中略)の手続を運用(中略)する場合には、 (a)(中略)検討が一定の期間内に完了することを確保すること。(b)(中略)手続規則、方法、原則及び指針を開示すること。
●附属書26-Aの適用に関する日米両政府の書簡 日本国及び合衆国は、(中略)あらゆる事項(関連する将来の保健制度を含む。)について協議する用意があることを確認する。

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2016年11月2日水曜日

【そうだったのか!TPP-Q16】医療制度は変わらないんでしょ?

Q16.医療制度は変わらないんでしょ?

A16.安価な医薬品が手に入りにくくなります


 確かに、すぐに「公的医療保険制度(国民皆保険)に関する変更は行われない」かもしれませんが、製薬大企業に有利なルールが盛り込まれました。アメリカの医薬品・医療産業がどれほど巨大かを考えれば自明のことです。各国の交渉で最後まで揉めたのも、薬に関する分野でした。協定文では、薬の特許期間やデータ保護についてのルールが定められました。


 ①特許期間の延長:新薬は、特許出願から販売承認まで概ね10年かかります。その間に「不合理な短縮」とみなされる期間があれば、その年数分、特許期間は延長されることになりました。政府は、5年を上限とした延長制度が日本にもあると言っていますが、協定文に延長する年数は書かれていません。アメリカが相手では、5年以内に収まる保証はありません。

 ②データ保護期間:新薬のデータというのは、料理のレシピのようなもので、公開されれば安価なジェネリック薬(後発薬)を製造できます。政府は日本もデータ保護が8年とされているので問題ないと言っていますが、協定文はデータ保護期間を「8年に限定することができる」という表現で、8年に限定しないこともあるという、あいまいな文言です。協定発効後10年で再協議も行われますので、さらに長期化する恐れもあります。


 このように、TPP協定が発効すれば新しい薬の価格がなかなか下がらない恐れが強まっています。これは患者の負担に直結し、保険料の引き上げにもつながります。途上国は新薬のデータを早く開示することを求めていて、「国境なき医師団」も「医薬品入手の面で最悪の貿易協定として歴史に残る」と痛烈に批判しているほどです。(寺尾正之)

Attention! 第18章 知的財産
●第18.48条2項 (中略)特許期間の不合理な短縮について特許権者に補償するため特許期間の調整を利用可能なものとする。
●第18.51条1項 (a)(中略)生物製剤を含む新規の医薬品の(中略)販売承認の日から少なくとも8年間、(中略)市場の保護について定めること。
●第18.53条1項 (a)当該最初に提出した者以外の者が(中略)当該医薬品を販売しようとしていることについて、当該医薬品が販売される前に、特許権者に通知(中略)する制度。

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2016年11月1日火曜日

【そうだったのか!TPP-Q15】検疫がしっかりしていれば大丈夫では?

Q15.検疫がしっかりしていれば大丈夫では?

A15.「48時間ルール」では食の安全を守れません


 現在、日本に入ってくる輸入食品は、平均92時間あまりかけて検疫所でチェックしていますが、TPPでは、48時間以内に検疫を終えて国内で流通させることが原則となりました。

 TPP協定文の第5章「税関当局及び貿易円滑化」には、輸入手続きの迅速化という名目で、「原則48時間で必ず入れなければならない」(原文で“shall”(すべき)と記載)と書かれています。日本政府は例外も認められると説明していますが、この条文が厳密に適用されれば、輸入品をしっかりとチェックできるのか、甚だ心配です。今でも、全国の検疫所で400人あまりの検査官が抜き取り検査(検査率10%程度)を行っているに過ぎないなか、さらに検疫体制がおろそかになることが予想されるからです。

 これまでにも、トマトから基準値を大幅に超える残留農薬が見つかった例がありましたが、判明したときにはすでに全量が消費済みで4万人以上が食べてしまいました。以前は、検疫所で安全性が確認されるまで留め置いていたのですが、近年、貿易優先の考え方が重視されているのです。今後TPPが発効し、さらにグローバル企業が利益を拡大することが重視されれば、消費者の健康や権利は後回しになりかねません。(山浦康明)

Attention! 第5章 税関当局及び貿易円滑化
●第5.10.1条 各締約国は、締約国間の貿易を円滑にするため、効率的な物品の引取りのための簡素化された税関手続を採用し、又は維持する。
●第5.10.2条 (中略)次のことを含む手続を採用し、又は維持する。(a) 中略)(可能な限り物品の到着後48時間以内)に物品の引取りを許可する…

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2016年10月31日月曜日

【そうだったのか!TPP-Q14】食の安全基準は守られたの?

Q14.食の安全基準は守られたの?

A14.消費者が求める厳しい規制はできなくなります


 政府は「今後も日本の安全基準が変わるようなことはない」と説明していますが、そうではありません。食の安全を守るために規制しようとすると、明確な科学的根拠が必要になり、消費者は食べたくないものがあっても、ますます避けることができなくなります。

 TPP協定の第7章「衛生植物検疫(SPS)措置」には、SPS委員会という専門委員会が新たに設置され、食品の安全性について検討することが書かれています。ここでは締約国や利害関係者が意見を述べることができ、「リスク分析」という客観的で科学的な証拠に基づく考え方が用いられます。

 これは、輸出国や遺伝子組み換え企業・食品企業などにとって大変都合のいいルールです。例えば、遺伝子組み換え作物など、安全かどうか世界でまだ科学的に結論が出ていないものについても、はっきり危険だと証明する必要が出てきます。ヨーロッパでは「予防原則」といって、科学的に因果関係が十分証明されていない状況でも規制を行う考え方がありますが、こうした慎重な考え方は通用しないのです。

 日本政府は、BSE対策や遺伝子組み換え食品の承認、食品添加物の使用基準、農薬の残留基準などについても規制緩和をどんどん進めています。その背景には、TPPの貿易優先の考え方に沿い、アメリカからの要求に対して日米平行協議で譲歩を重ねたこと、さらには国際機関の甘い基準を重視していることなどがあります。TPPが発効すれば、消費者が求める厳しい規制はこれまで以上に実現できなくなります。(山浦康明)

Attention! 第7章 衛生植物検疫(SPS)措置
●第7.5条1項 締約国は、この章の規定を効果的に実施し、及び運用するため、(中略)衛生植物検疫措置に関する委員会を設置する。
●第7.9条2項 各締約国は、(中略)自国の衛生植物検疫措置が(中略)合理的に関連する記録された客観的で科学的な証拠に基づいていることを確保する。
●第7.13条1項 締約国は、(中略)衛生植物検疫措置について利害関係者及び他の締約国に対して意見を述べる機会を与えることの価値を認める。

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2016年10月28日金曜日

【そうだったのか!TPP-Q13】遺伝子組み換え(GM)表示は なくならないの?

Q13.遺伝子組み換え(GM)表示は なくならないの?

A13.表示はなくならなくても輸入は増えます


 遺伝子組み換え(GM)表示がすぐになくなることはありませんが、今の日本の表示は不十分です。より厳しい義務表示はできなくなります。

 現在、日本で流通するGM作物は大豆、とうもろこし、菜種、綿実で、これらを使った食品には「大豆(遺伝子組み換え)」などと表示することになっていますが、これを積極的に書きたがる企業はいません。GMと非GMを分別していない(混ざっている)場合は「不分別」と表示することになっているので、実際にはGMを使っているのに関わらず「遺伝子組み換え使用」と書く必要がないという、甘いルールなのです。また、油やしょうゆなど加工度が高いものは表示義務がないなど、抜け道がたくさんあります。


 こうしたなか、消費者からはより厳格な義務表示を求める動きもあります。しかし、TPPでそれはできなくなるでしょう。TPP協定の第8章「貿易の技術的障害(TBT)」には、各国が食品表示のルールを作る際の規定があり、「義務表示」など強制力のある表示を行う場合は、輸出国やGM企業なども利害関係者として関与できる仕組みがあり、必ず反対してくるからです。

 今後GMは、アメリカで承認され話題となったサケなど動物にも広がります。そうしたものに表示義務を課すことも難しくなるでしょう。


 さらに、未承認のGM食品・穀物がわずかに(5%以上)混入していた場合、「違法だから」とアメリカなど輸出国に送り返すことができず、「まず協議する」というルールも作られました。それらを日本が早く合法化するよう、輸出国が要求することも可能になります。日本は、ますます遺伝子組み換え大国への道を突き進むことになるでしょう。(山浦康明)

Attention! 第8章 貿易の技術的障害(TBT)/第2章 内国民待遇及び物品の市場アクセス
●第8.7条1項 各締約国は、他の締約国の者に対し、(中略)強制規格、任意規格及び適合性評価手続の作成に参加することを認める。
●第2.27条8項 LLP(GM作物の微量混入)の発生による貿易の混乱の可能性を減ずるため、(a)(中略)現代のバイオテクノロジーによる生産品の承認のための申請を(中略)奨励するよう努める。

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2016年10月27日木曜日

【そうだったのか!TPP-Q12】国産表示があれば心配いらないのでは?

Q12.国産表示があれば心配いらないのでは?

A12.アメリカでは牛肉の国産表示が禁止されました


 じつは、アメリカではこれまで、国内法で牛肉や豚肉の原産国表示が義務付けられていました。米国民はどうしても国産肉を買うため、カナダやメキシコはそのぶん、自国の牛肉が売れなくなります。これは輸入肉に対する差別であり、公平な自由貿易を定めたWTOルールに違反するとして、カナダとメキシコはパネル(紛争解決のための委員会)に訴えました。

 2015年5月、パネルの上級審は、「必要とされる記載を超える負担のある表示」、つまり不当な貿易障壁に当たるとして、訴えを認めたのです。アメリカは敗訴し、原産国表示を廃止しなければならなくなりました。


 WTOの判断の元となった規定は、TPP協定の第8章「貿易の技術的障害(TBT)」にも準用されています。つまり日本の農産物も、原産国の表示ができなくなる可能性があることを意味しています。

 産地の表示ができればいいのでは、と考える方もいるかもしれませんが、それも難しくなるかもしれません。第18章「知的財産」では、地理的表示が「一般名称として日常の言語の中で通例として用いられる言語」(例えば、「新潟県産こしひかり」や「宮崎県産マンゴー」などが考えられる)だと、利害関係者から表示の取り消しを求められる可能性があります。

 また、第8章の附属書にも、食品の包装の表示は「正当な目的で必要なものに限る」「正当な商業的利益が保護されること」とされています。こうしたことから、国産表示や産地表示が海外の利害関係者に不当であるとして訴えられ、日本が敗訴することは十分にあり得るのです。(山田正彦)

Attention! 第8章 貿易の技術的障害(TBT)/第18章 知的財産
●第8.4条1項 貿易の技術的障害に関する協定の次の規定(2.1、2.2ほか)は、必要な変更を加えた上で、この協定に組み込まれ、この協定の一部を成す。
●第18.32条1項 締約国は(中略)次のことを根拠として、利害関係者が地理的表示の保護又は認定に異議を申し立てること(中略)を認める手続を定める。(c)当該地理的表示が、関連する物品の一般名称として日常の言語の中で当該締約国の領域において通例として用いられる用語であること。

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2016年10月26日水曜日

【そうだったのか!TPP-Q11】林業は自由化されているから影響ないのでは?

Q11.林業は自由化されているから影響ないのでは?

A11.国産材利用の流れに逆行しています


 たしかに丸太の関税は1964年にゼロになっており、合板の関税も高いもので10%と、すでに自由化は進んでいます。その結果、安い輸入材に押され、2002年には木材の自給率が18.2%まで下がってしまいました。

 しかし、国際的な森林資源や環境保全の動きで丸太の輸入が難しくなってきたことや、戦後植林した国内の森林が成長し、ちょうど利用できる時期になってきたこと、さらには国産材の利用を広げようと振興策が進められていることを受け、ここ数年で自給率は上昇。2014年には31%にまで回復しています。


 TPPでは、今残っている合板などの関税も長くても16年で撤廃されます。そうなれば、合板などの輸入がさらに増え、せっかく回復してきた自給率がまた下がってしまいます。国内の山林が荒れたり、国内外の環境に悪影響を与えたりする心配もあります。

 政府は、木材加工施設の大規模化やセーフガードで影響を防ぐと説明しますが、輸入相手国第3位のアメリカに対してセーフガードはなく、カナダとは4年後にセーフガードの存続自体を再検討することになっています。

 また、地方自治体などで木材の地産地消のために進められている地域材の利用振興策は、「輸入材を差別するもの」としてアメリカなどの企業・投資家からISDS条項で訴えられかねません。

 林業は、地域経済の再生や環境を守るうえでも、今後の日本にとって大切な分野です。しっかりと着目しなければなりません。(坂口正明)

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2016年10月21日金曜日

【そうだったのか!TPP-Q10】漁業にも影響はあるんけ?

Q10.漁業にも影響はあるの?

A10.漁業補助金が出なくなる恐れがあります


 TPPは農業の問題としか考えていない人が多く、漁業者からも不安視する声は聞かれません。これまで日本は、漁港の整備や燃料に補助金を交付したり、漁船を造るために低利な融資を行ったりすることで、沿岸の零細な漁民をかろうじて守ってきました。

 ところがTPP協定の第20章「環境」では、「濫獲(乱獲)や過剰な漁獲能力に寄与する補助金」を規制し、削減・撤廃しなければなりません。政府は、日本は過剰な漁獲に当たらないので、「補助金はなくならない」と説明しています。しかし濫獲とは、「最大持続生産量(総量を減らすことなく漁獲できる最大量)を維持する水準」と定義されており、日本はアジやサバ、イカ、サンマなどを除いて、過剰な漁獲とされる可能性があります。しかもその判断は、国際機関やTPPの小委員会で行われます。参加国のなかに、伝統的な沿岸漁業に理解を示す国は見当たりません。

 もう一つの懸念は、外資系水産会社が漁業権に入札できるようになることです。第10章「国境を越えるサービス」の附属書では、例外は「漁業への投資、または漁業に関わるサービス」だけであり、「漁業」そのものは守られていないと考えられます。イギリスがEUを離脱したのは、沿岸の漁業が外資系企業に荒らされたのも理由の一つだったと報じられています。

 これまで日本の漁業は、いわばセーフガードともいえるIQ制度(輸入上限を定め、それ以上の輸入を禁じる制度)により維持されてきましたが、これも廃止されます。関税も、昆布を除いて即時撤廃または16年かけて撤廃です。このままではひどい打撃を受けるかもしれません。(山田正彦)

Attention! 第20章 環境
●第20.16条5項 締約国は、(中略)濫獲及び過剰な漁獲能力に寄与する全ての補助金の規制、削減及び最終的な撤廃を含めなければならないことを認める。(中略)補助金及び相殺措置(中略)を交付し、又は維持してはならない。

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2016年10月19日水曜日

【そうだったのか!TPP-Q9】農産物は例外があるから守られたのでは?

Q9.農産物は例外があるから守られたのでは?

A9.手をつけていない品目がないことを政府も認めました


 守られたものなど一つもありません。TPPでは、これまでのFTAと異なり、関税の撤廃・削減をしない「除外」や「再協議」の規定が存在せず、すべての農産物が関税撤廃の対象となります。


 日本の農産物のうち高関税のものは、重要5品目(米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)などごく一部にすぎません。これらの重要農産物は、地域や国土の保全、国民生活に大きな影響を与えるため、TPPに関する国会決議は、関税の撤廃・削減をしないことを求めていたのです。しかし、政府はこの決議に反し、重要5品目の29%(170品目)で関税撤廃に合意しました。野党が「無傷のものはいくつあるか」と追及すると、政府は、税率を維持したとするものも含め、すべての品目に手をつけたことも認めました。重要5品目以外では、じつに98%の品目で撤廃されます。


 政府が「例外」とする、即時の撤廃を免れたものには、さまざまな悪条件を押し付けられました。牛・豚肉の関税は大幅に引き下げられ、輸入肉との価格差を考慮すれば実質ゼロで壊滅的な影響を受けます。米、麦、乳製品、砂糖については輸入枠が新設されます。日本は現在、水田面積の4割で減反しながら、WTOの下で年間77万トンの米を輸入していますが、TPPで輸入枠がさらに8万トン近く増えます。輸入が急増した際に関税を一時的に引き上げるセーフガードも発動が著しく難しく、すべて期限付きです。

 さらにとどめを刺すのが、日本だけが農産物輸出国5か国と約束した、発効7年後の見直し協議です。5か国の平均関税撤廃率は99.8%。日本がさらに厳しい譲歩を強いられるのは必至です。(岡崎衆史)

Attention! 第2章 内国民待遇及び物品の市場アクセス
●第2.4条2項 各締約国は、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、附属書2-D(関税に係る約束)の自国の表に従って、漸進的に関税を撤廃する。
●附属書2-D(日本国の関税率表:一般的注釈)9(a) オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド又はアメリカ合衆国の要請に基づき、(中略)原産品の待遇についての約束(この表における関税、関税割当及びセーフガードの適用に関するもの)について検討するため、(中略)7年を経過する日以後に協議する。

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2016年10月18日火曜日

【そうだったのか!TPP-Q8】じゃあ、TPPはどうやったら止められるの?

Q8.じゃあ、TPPはどうやったら止められるの?

A8.日米が批准しなければ、TPPは発効しません


 TPP協定は、全参加国が2年以内に議会承認など国内手続きを終えられない場合、国内総生産(GDP)の合計が85%以上を占める6か国以上が合意すれば、発効することになっています。このこと自体、GDPが重視された経済大国優先のルールといえます。


 TPP参加国ではアメリカと日本がGDPの8割近くを占めているため、両国とも批准しなければ発効できません。その意味では、日本はTPP発効の鍵を握ります。日本が批准しなければ、アメリカの結果を待つことなく、その時点でTPPは破棄となるのです。

 アメリカでは大統領選を控えTPP反対の声がかつてないほど高まっており、批准の見通しはまったく立っていません。その他の国は、2016年2月の署名後は国民への説明や影響試算などを行っており、またアメリカの批准が見通せない中で早期批准をする必要がないため、2016年8月現在で関連法まで含めて完全に批准した国はありません。


 こうした状況のなか、4月の国会、そして秋からの臨時国会で拙速に批准を進めようとする日本の姿は極めて異常です。十分な説明もなされないまま、批准の手続きを進めさせてはなりません。

 アメリカとEUの貿易協定(TTIP)や、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などのメガFTAも、交渉が大幅に遅れています。各国の異なる状況を無視して企業や投資家に有利なルールを押し付けようとする交渉には矛盾と無理があり、また途上国政府や市民社会が強く反発していることが理由です。日本でも、いのちや暮らし、民主主義の観点からも、「TPPはいらない!」という声を上げ続けることが大切です。(内田聖子)

Attention! 第30章最終規定
●第30.5条1項 この協定は、全ての原署名国が(中略)国内法上の手続を完了した(中略)後60日で効力を生ずる。
●第30.5条2項 この協定は、(中略)少なくとも6の原署名国であって、(中略)国内総生産の合計が(中略)85%以上を占めるものが(中略)国内法上の手続を完了した(中略)後60日で効力を生ずる。

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2016年10月14日金曜日

【そうだったのか!TPP-Q7】政府の試算では メリットもあると聞いたけど?

Q7.政府の試算ではメリットもあると聞いたけど?

A7.恣意的な数字操作による試算といわざるをえません


 日本政府が2015年12月に出した影響試算によると、TPPの発効後10~20年でGDPは2.59%(13.6兆円)上昇、雇用は79.5万人も増えるとしています。2013年の試算に比べると4倍以上もプラスの効果が増えました。


 この試算の前提は、①輸出入の拡大によって貿易開放度が上昇する、②生産性の上昇によって賃金・労働供給が増える、③所得の向上によって貯蓄・投資が増えて生産力が拡大する、というものです。しかし日本経済は、労働コストを下げることで生産性を上げてきました。自由貿易がさらに進めば、労働コストをさらに下げるしかなく、無理のある前提です。

 米タフツ大学が2016年1月に発表した、より現実的な試算では、日本はTPPの発効後10年でGDPが0.12%減少、雇用は7.4万人失われると分析。日本政府とは真逆の結果となりました。この分析に携わった経済学者のジョモ・K・スンダラム氏は、2016年5月の来日時に「日本政府の試算は驚くほど楽観的」と指摘します。「どの分野で雇用が80万人も増えるのか?」と質問すると、政府の担当者は「どの分野で雇用が増えるかという詳しい試算はない」と答えました。


 また、政府の試算は、農業への影響を過小評価しています。2013年の試算では4兆円の減少だったのが、2015年には1,500億円の減少と、20分の1以下に縮小。「対策をするから影響はない」というのが政府の主張ですが、影響額を出す前に対策費を入れ込むとは本末転倒です。東京大学の鈴木宣弘教授の試算では、農林水産業の減少額は1.6兆円にも上ります。

 このように、モデルや前提が変われば、試算の結果はいかようにも変わります。貿易を推進する立場にある米国政府の国際貿易委員会(ITC)の報告でも、「TPPによる経済効果はほとんどない」という結果が明らかになっています。日本政府の試算を鵜呑みにするのではなく、第三者機関や研究者による冷静な分析も踏まえた議論が必要です。(内田聖子)

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2016年10月13日木曜日

【そうだったのか!TPP-Q6】交渉過程が秘密なのは、外交だから仕方ないのでは?

Q6.交渉過程が秘密なのは、外交だから仕方ないのでは?

A6.いまだかつてない秘密主義です。民主主義に反します


  TPP交渉は、異常ともいえる秘密交渉が貫かれてきました。交渉参加前には「秘密を守ります」と約束する保秘契約書へのサインが求められ、交渉中は国民はもちろん、与党の国会議員でさえ協定文案を見ることができませんでした。一方で、アメリカの大企業やロビイストたち約500人は、「貿易アドバイザー制度」を通じて自分たちの要求を協定文に盛り込んできたのです。

 秘密主義の背景にはアメリカの意向が強くあります。WTO(世界貿易機関)や他のFTAと同じレベルで国民や業界団体、市民社会に情報を開示すれば、多様な意見が出てきて交渉がまとまらない、だから今後は秘密にする、というのがアメリカの考えでした。以降、多くの貿易交渉で秘密交渉がスタンダードになりつつあります。

 大筋合意後、TPP協定文は公開されましたが、日本語に訳されたものは3分の1程度。交渉の過程を記載した文書は発効後も4年間は秘密とされています。2016年4月のTPP国会批准審議で、野党議員が甘利氏と米国フロマン氏の交渉内容を情報開示請求したところ、出てきた文書は「真っ黒塗り」。政府は「外交だから仕方ない」と答えていますが、これまで日本が行なってきた貿易交渉の中でTPPほど秘密主義の協定はありません。


 2015年3月、野党議員が「TPPのように『秘密保持契約』に日本がサインをした交渉は過去あったのか」と質問すると、外務省の斎木尚子経済局長は「TPP以外に例はない」と答えています。日本はどんな交渉をして、何を得て、何を失ったのか? 国民の様々な疑問に対し、政府は答える責任があります。

 「知る権利」を奪い、民主主義の根本を揺るがすTPPの秘密主義を、改めて問われなければなりません。(内田聖子)

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2016年10月11日火曜日

【そうだったのか!TPP-Q5】アメリカの大統領候補も反対なんでしょ?

Q5.アメリカの大統領候補も反対なんでしょ?

A5.さらなる要求を押しつけられるかもしれません


 確かに、アメリカ大統領選の候補者であるヒラリー・クリントン(民主党)もドナルド・トランプ(共和党)もTPPに反対しています。背景には、アメリカ最大規模の労働組合や環境団体などがTPPに反対し民主党議員に強く働きかけていることや、北米自由貿易協定(NAFTA)での雇用喪失の教訓、さらに政府が出したTPP影響試算もほとんど経済効果がなかったことなどがあります。


 しかしどちらが大統領になったとしても、TPPが完全に葬り去られる可能性は五分五分でしょう。クリントンは以前に「再交渉する」とも述べており、トランプも就任後は産業界からの圧力によって完全にTPPを破棄できないかもしれません。再交渉となれば、日本には関税のさらなる引き下げや、畜産農家への補助政策の廃止、保険・共済などの分野でアメリカからさらなる要求を突きつけられる可能性があります。


 再交渉とならなくても、アメリカは「承認手続き」を用いて、署名から発効までの間に相手国の国内法や規制をチェックし、変更を求めてくることも考えられます。アメリカは中南米の国々とのFTAの中で数々の要求を行い、相手国の国内法を変えさせてきたのです。

 さらに、TPP交渉と並行して進んできた日米並行協議も危険です。TPPを再交渉に持ち込まなくても、2国間の交渉でアメリカが日本に求める内容を実現させることができるのです。ここで決めた規制緩和などの内容をTPP発効前に日本が実行してしまえば、TPPがなくなっても元に戻すことはほぼ不可能です。(内田聖子)

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