Q17.国民皆保険制度が守られたなら大丈夫では?
A17.制度の内側から壊されていくでしょう
政府は、国民皆保険制度を支えている、薬の価格を決めるプロセスは変更されないと言っています。しかし、制度の枠組み自体は変わらなくても、これまでよりさらに「企業寄り」の運用に変わっていく恐れがあります。
TPP協定の第26章「透明性及び腐敗行為の防止」の附属書では、各国の薬の価格を決めるプロセスにおいて「透明で公正」な手続きを行うよう求めています。保険収載といって、新しい薬や医療機器を保険に適用する手続きを進める際には、「検討を一定期間に完了すること」や「手続規則、方法、指針を開示すること」を求めたり、製薬会社が不服を申し立てることもできるようになっています。
日米二国間の交換文書(サイドレター)にも、薬の価格の決め方について、外国の利害関係者が政府の審議会に出席することや、意見書を提出できることが定められています。今後、アメリカの製薬企業が「透明性」を盾に、利害関係者として影響を及ぼすようになり、発言力が今以上に強まっていくでしょう。外国の製薬企業の主張に沿う形で、薬の価格制度が運用されれば、実質的に価格決定プロセスが変わることになります。
さらに、「関連する将来の保健制度」(日本は国民皆保険制度)について「協議する用意があることを確認」したことも明記されました。いつから何を協議するかは書いていませんが、「協議する」という確約をさせられた形です。このまま外国企業の言いなりとなれば、国民皆保険制度が続いても内側から壊され、空洞化する危険があります。(寺尾正之)
Attention! 第26章 透明性及び腐敗行為の防止
●附属書26-A.第3条 締約国は、自国の保健当局が(中略)新たな医薬品若しくは医療機器を一覧に掲載するため(中略)の手続を運用(中略)する場合には、 (a)(中略)検討が一定の期間内に完了することを確保すること。(b)(中略)手続規則、方法、原則及び指針を開示すること。
●附属書26-Aの適用に関する日米両政府の書簡 日本国及び合衆国は、(中略)あらゆる事項(関連する将来の保健制度を含む。)について協議する用意があることを確認する。
★大好評のブックレット「このまま批准していいの?続・そうだったのか!TPP 24のギモン」。学習会やイベントのテキストとしても最適です。注文はこちらから。
0 件のコメント:
コメントを投稿