Q1.TPPって結局、 誰のためのルールなの?
A1.大企業と富裕層1%がさらなる富を得るためのルールです
今世界では、最も裕福な上位10%の富裕層が世界の富の87.7%を所有しています。日本でも2%の富裕層が純資産1億2000万円以上の富を得ている一方で、貧困率は6人に1人(2014年)。ひとり親など大人1人の世帯に限れば貧困率は54.6%で、先進国で最悪の水準です。
1980年代は、富裕層がより豊かになれば、いずれ貧困層にも富がこぼれ落ちる「トリクルダウン」が信じられていました。しかし30年以上たった今、行き過ぎた市場原理主義や自由貿易推進こそが、世界の貧困・格差を生み出す原因であることが実証されています。グローバル経済の推進者である経済協力開発機構(OECD)や世界銀行、自由貿易を推奨してきた経済学者たちも認めていることです。
TPPは、こうした負の教訓を無視し、一部の富裕層や大企業・投資家にとって有利なルールをさらに進めようとするものです。交渉や協定文作成に関与してきたのは米国の大企業やロビイスト、大企業から政府交渉官に「転職」した人たちです。米通商代表部(USTR)のトップであるマイケル・フロマン氏は大手銀行シティ・グループ出身であり、製薬企業の元重役が「知的所有権」の交渉官、保険会社出身者が「金融サービス」の交渉官、モンサント出身者が「衛生植物検疫」の交渉官……ということも当たり前の世界です。
TPPの他にも、現在世界では「メガFTA」と呼ばれる貿易交渉が着々と進んでいます。米国とEUの間のTTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)や日本、米国、EUなど50か国からなるTiSA(新サービス貿易協定)、さらには「中国版TPP」ともいわれるRCEP(東アジア地域包括的経済連携)などです。これらはいずれも、大企業優先のルールであり、ISDS条項が含まれ、秘密交渉である点などTPPと共通しており、参加国の市民社会からは貧困と格差を助長し、人権や環境に悪影響を及ぼすと強く批判されています。(内田聖子)
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